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カンファレンス 口演録 [2002年自閉症カンファレンス  口演録]

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自閉症カンファレンス2002

大きな講堂201会議場が私達の口演にあてがわれました。

私が口頭で発表した話を載せます。何かの参考になれば。(一部追加修正有り)




はじめまして

本来なら抄録にある内容を発表するのが本当なのでしょうが、今日は別な話をしたいと思います。



何故かというと、何らかの要因で突発的に発生した自閉症は(現実にあれば)別ですが、
私達のように、一子相伝 自閉症の宗家ともなると、家族、親類縁者、変なのばっかりです。


特に私の父は、50才でアルツハイマー病の予兆を示し62才で死にました。


私もそろそろ、父の様子が変わってきた年齢に近くなりましたし、実際自覚症状も出てきました。
今、言いたいことを言っておかないと、後悔しますからね。


まあこれから口に任せて話しますので、
その中に、皆さんのヒントになるような所があったら、是非利用して下さい。


抄録にある話は大人になってからの具体的なエピソードとして書き起こしましたので
後でじっくり読んで見て下さい。


他にも、

40年かかってやっと落ち着いで作業が出来る環境になったが、これはTEECHだった。とか、
情報を脳の内部でどの様に処理され、うまく実行されないのか、その実行までのようす。とか、
漢字圏における読字障害と、英語圏における読字障害の発生の違いと、
読字障害に陥る課程の具体例。とか、
パニックの具体例とその構造。とか、
自閉症に多い斜視や、視力障害についての考察。とか、
自閉症に関する症例を網羅した実例を準備してきましたので、どこまで話せるか。




先ず山岸美代子が話します。




このメガネを掛けると、主人は「亀仙人にそっくりだ」と言います。
亀仙人というのはドラゴンボールに出てくるキャラクターだそうですが、生憎と私は知りません。
「何だ亀仙人も知らないのか」と呆れられますが、私だってドラゴンボールくらい知っています。
ただ亀仙人を知らないのです。
何でも主人公のお猿さんの師匠だそうで、多分そっくりなので見なくてよさそうです。


私の日常というのは、ちょっと思い返してみても、
各地の民話に出てくるバカ息子とか落語の与太郎みたいなのですが、
二十年以上前、それをあっさり自閉症と結びつけてみせたのは主人だけでした。

デート初日から、きっと自閉症だ、絶対自閉症だ、と楽しげに言い続けていた気がします。
気がするというのは、私にとっては自閉症イコールカナー型でしたので、
余り真剣に聞いてはいなかったのです。


主人は私と違って、小学校5年の時から自分は軽い自閉症だと確信しており、
以来どこかに自分とそっくりなやつがいないものかと、これはと思う子には必ず話しかけ、
話しかけられない子は遠くから行動を観察し、と常に研究を怠らなかったそうです。

やっと見つけた私は、同じアスペルガー症候群でも主人とはタイプが違ったのですが、
それでもこの程度の似方でさえ、ひとりも見つからなかった、と主人は言います。
注釈:私は小学校3校中学3校高校2校へ通い、延べ2000人の同世代と席を隣にしたが、こんなに変な、そして私と同じ感覚の人間に会うのは初めてで本当に驚いた。


ではそれまで主人以外のヒトは、
アスペルガー症候群の私の行動をどうとらえて、どう表現していたか。

これから五つばかり私的民話をお話しようと思います。


中学時代の話が多いのは、丁度そのころから、立て続けに「不可思議な出来事」が起こり始め、
さすがの私も「何じゃこりゃ」と思い始めたので、ひときわ印象深いのです。

しかしこの時点でも、「ひょっとして私は他の人と違うのか」などと思いつきもしない私は、
誰にでもある事、と納得していたのです。

では、ようこそ私の世界へ、




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学校の怪談 その壱 えんま大王 (美代子口演録) [2002年自閉症カンファレンス  口演録]

学校の怪談
その壱 えんま大王




春なお浅い中一の一学期、英語の時間だった。





授業中、ふいに一年二組の教室に不気味な静けさが漂い、
見渡せば、私以外のクラス全員が背中を丸め、一心に何かに取り組んでいる。





当時の区立中学は、小学校ですごく出来た子も、
普通に出来た子も、普通に出来なかった子も、
まったく出来なかった子も、悪ガキも真面目な子も、一緒くただ。






「えっ?」櫻井さんが迷惑そうに顔を上げる。

「ねえ、何してるの」私は小さな声で繰り返す。



櫻井さんはセーラー服の袖でノートを囲い込みつつ
だから何してるって何?」と声が大きくなったその瞬間、

「そこの二人!廊下に立つ!」






数分後、男性教師が様子を見に廊下に出て来た。
手には黒いえんま帳。





「私は話しかけられただけです」私の方を見遣り、自分にはまったく非がない事を主張する櫻井さん。

櫻井さんの鋭い口調に教師は一瞬うろたえたものの、
「授業中は話しかけられても答えない!櫻井は入ってよし!」と威厳を保ち、
えんま帳は開かなかった。





私はしばし無言でにらまれた後、
「口は災いの元」と言われ、えんま帳に何かしっかり付けられる。




未だにあのときみんなが何をしていたのかわからずじまいである。



えんま大王

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学校の怪談 その弐 漂流教室 (美代子口演録) [2002年自閉症カンファレンス  口演録]

学校の怪談
その弐 漂流教室




これも中一の一学期、若葉新緑のころだった。





その朝もいつもと何らかわりなく、弁当を持って家を出た。


テレビでは連続テレビ小説「あしたこそ」をやっていた。
心なしか通学路はひとけがなくてひっそりしている。


一瞬日曜日かと錯覚しドキッとしたが、それなら朝の連続テレビ小説をやっているはずがない。







校門のところでやっと向こうから歩いてくる人間に遭遇し、ホッとする。
それは中年の家庭科教師だった。


「おはようございます」、

彼女に挨拶してから先に校門をくぐったが、入り口周辺には誰もいない。




そればかりではない。下駄箱にも誰もいないし、その先に見える校庭も無人だ。

どういう事なのだろう。




上履きに履き替え一年二組の教室に向かったが、途中の廊下にも誰もいない。
両側の教室からも人声がしない。



予想していた通り、一年二組の教室にも人っ子ひとりいない。



しばらく自分の机で呆然としていたが、仕方ないので帰ることにした。









廊下をとぼとぼ歩いていると、突然気が付いた。
あーっ、今日は運動会だ!




何かに気を取られて忘れていた訳ではなかった。
うっかり忘れていたというならまだ救いがある。

今日が運動会だということに、たった今気が付いたのだ




そう言えば先週来、学校全体がザワザワガヤガヤと落ち着かなかった。



すなわち創作ダンスの通し稽古やら、ホームルームで配られたゼッケン、
揃いの鉢巻き、観客席の割り振り、ガリバン刷りのお知らせの数々、
突如として校庭に出現した巨大なベニヤ板のポスター数枚、




ダメ押しで「あしたお弁当どうしようかなあ」という帰り際の友人の不可解な独り言。
これらの意味が、突如として統合されたのだ。






今日は運動会なのだ。



さあ大変だ。運動会はよそのグラウンドを借りて行われる。
私は急いで家に駆け戻り、体操服に着替えると、支給された鉢巻きをしめ、
ゼッケンとそれを縫いつける為の針と糸、弁当を持ち、
驚く母親に説明するのももどかしくグラウンドに向かった。





15分ほど走りに走り、やっと着いたときには吐きそうになっていたので、
「気分が悪くて遅れました」という言い訳が居ながらにして強い説得力を持った。



開会式はとっくに終わっており、競技が始まっていた。








     そして、静かな日常が戻ったある日。


家庭科の時間、みんなはミシンを踏んでいた。




突然「ちょっと来てくれる」、

あの日校門で出会った家庭科教師が手招きするではないか。

私は血の気が引いた。




てっきり運動会の事で怒られるのだろうと思い、クラゲ状態になって漂って行くと、
教師はやさしく「あなたのおうち遠いの?」と聞く。



安心した私が「いいえすぐ近くです。そこをまっすぐ行って信号渡って、五分くらいです。」
と詳しい道順を教えると、次は「あなた体弱い?」と聞く。



「いいえ」と答えると、今度は「あなたのおうち、躾けは厳しい?」と聞くので、
「そんなに厳しくないです」答えると、教師は「・・・はい、いいわよ」と解放してくれた。





さっぱり訳がわからない





     そして、又静かな日常が戻ったある日。




私は二年生になっていた。


家庭科の授業の真っ最中、同じ教師が、突然「あなた太ったわよねえ」と言う。

教師の言う通りで、二年生になって急激に太ったので「はい」と言うと、
「かわいくなったわ、ねえ」とみんなに同意を求める。

みんなは大笑いするし、さっぱり訳がわからず








教師も「運動会の日にセーラー服で学校に来た変な子」の謎解きに
二年越しで苦しんでいたに違いない。



漂流教室

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学校の怪談 その参 ゴーゴンの呪い (美代子口演録) [2002年自閉症カンファレンス  口演録]

学校の怪談
その参 ゴーゴンの呪い




中一の二学期の中間試験(応用が利かない)

試験官は担任の美術教師だった。






夏休み明けの席替えで、あみだくじにはずれた私の席は、教壇の真ん前である。



やがて目の前に人数分のプリントの束が置かれ、一枚取って後ろへと回す。

「えーっと、まだ早いので用紙は伏せておいて下さい」言いつつ教師が教壇に戻る。



私はプリントを裏返し、手を膝に置き、「始めっ」の合図を待つ。

合図を見逃すまいと美術教師の顔をじっと伺う。
向こうもこちらを見ているが、何の表情もない。





この美術教師は入学式直後のホームルームで、
黒板の上に飾ってある「根性」の額を見て鬼瓦のような顔になり
「俺は根性という言葉が大嫌いだ。はずせっ!」と生徒に命令した教師である。

そんな教師が至近距離で無言、無表情でいるのは不気味だ。



見つめる、見つめ返す、見つめる、見つめ返す。

その距離1メートル弱。しかしいくら待っても「始め」の合図はない。




遅い、遅すぎる!プリントが配られてからかれこれ三十分ではないか。

すると辺りにはまたもやあの不気味な静けさが・・・。



あっ、もしや試験は合図無しで始まっているのか?

ついにたまりかね、隣は櫻井さんで懲りたので、肩越しに後ろの席の子に、
「ねえ、始めていいの」、

「始めていいって・・・何を」試験中に話しかけられ困惑した声。

このやりとりを真っ正面で見ながらも、無言無表情の担任教師。




やはり試験は始まっていた。




きゃぁぁぁぁ、
声にならない叫びとともに私はプリントをっひっくり返し、
がくがくする手で鉛筆の芯をバキバキ折りながら、
何とか答えを書き込もうと無駄な努力をするのだった。






因果は巡る。それから10年の後。




二十一才の私はガラガラの都営バスで、この美術教師と向かい合わせになった。



見つめる、見つめ返す、見つめる、見つめ返す・・・・・・・

都営バスとベンチシートの向こうとこちらで、その距離数メートル。





これぞまさしくゴーゴンの呪い

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学校の怪談 その死 犬神家の一族 (美代子口演録) [2002年自閉症カンファレンス  口演録]

学校の怪談
その死 犬神家の一族



中一の三学期




三点倒立の実技試験であった。



球技がまったくダメな私が点数を稼げるのはマット運動ぐらいだから必死だ。

授業中にマスターできなかった私は、夜毎ふとんの上で、
母親にモニターしてもらい、頭頂部がへこむかと思われるほどの練習を重ね、
やっとのことでコツを掴み、試験に臨んだのだった。





試験は長いマットの上に、出席番号順に並ぶだけ並ばされ、笛の合図で一斉に倒立する。
私は最初のグループだったが、もちろん猛練習の甲斐あって楽々クリア。


しかし・・・・・・いくらたっても「やめっ!」の笛が聞こえない。



頭に血が昇る、マットはふとんほど柔らかくないので頭頂部は痛む。

いったいいつまでさせるんだろう、おかしい、と思った瞬間、

体育館にあのなじみの不気味な静寂が・・・・・




(あっ、やめっの合図なしなんだ)、私はパッと倒立をやめた。



ところが・・・・目に入ったのは逆さになった足、足、足、・・・みんなは延々と倒立し続けていた。




マットの真ん中であぐらをかいていた教師は、
「誰だっ!勝手にやめるやつは!」と怒鳴りながら立ち上がり、
「おいっ誰がやめろと言った!あっ、この野郎、おまえか

私はもう一度倒立しようとしたのだが、
「やらなくていいっ。そんな態度の悪いやつにはもう点数はやらないっ!」
と、またまたえんま帳に付けられる。



その学期の体育は本当に1だった。




犬神家の一族

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