どこ見てるの? [見る]
「ねえ、さっきいた人、誰だったか気が付いた?」
「誰って、だれ」
「目の前に芸能人が居たじゃん」
「えーそんな人居ないよ」
「目の前に居たじゃん。スラッとして綺麗な人」
「・?・・ああ、何となく綺麗な人が居るなって思ったけどダレ」
「ダレって××さんじゃん」
「えーーーーー何で教えてくれなかったのーーー」
「教えたじゃん。教えたらフンフンって言ってたじゃん」
「えー車があぶないって言ってるのかと思った」
知能が高い自閉症の子供、アスペルガー症候群の子供と居るとこんな事が多いと思いませんか?
コレには、共同注視が出来ないとか、指さしが分からないとかコミュニケーションの質に問題があるとか、
あらゆる要素を含んだやり取りなんですが、その一つの光明とも言える素晴らしい論文を紹介します。
ここに概要が書いています。(クリックすると拡大します)
この論文は、星和社の 自閉症と発達障害研究の進歩 2004/Vol.8 特集 コミュニケーション
に載った論文で、同じ本に私たちの話も載っています。
【自閉症テレビ9】目を見ない?アスペルガー1
そこみて・・ソコ! [見る]
「そこみて・・ソコ!」
「そこって・・どこ」
「ソコだって!・ソコ!」
自閉症児とのやり取り。いつも同じ事の繰り返し。
なんでこの子は、こんな簡単な事が分からないんだろう。
本当にわからないんです。分かってないんです。これを見て下さい。
これは、知能の高い自閉症アスペルガー症候群の子供に、テレビドラマを見せ、ドコを見ているか
実験したのです。
着想が素晴らしいでしょ?
そうしたら、誰もがドラマの筋立てに沿って同じ所を見るのに、自閉症児だけは、他の人と全く違う
所を見ていると言う事が明確になったのです。
その分析についても考察が書かれていますが、それは専門家に任せておきます。
ここで重要なのは、正常な人であれば、誰もがほぼ同じ所に注目してテレビドラマを見ているのに、
自閉症児、アスペルガーの子供は、全く違う所を見ていると言う所です。
それでもドラマなら、筋立てで話の内容が分かる事もあります。
ところが「絵カード」だったらどうなるでしょう。
「絵カード」を作って子供にコマンドを知らせようとしても、その子が見ている所が違えば、
見せている親と全く違う解釈をして、それを疑問に思いながら言われた事をやり続ける、
と言う事が起きるのです。
【自閉症テレビ10】目を見ないアスペルガー2
意図の共有 [見る]
例えば、「絵カード」を作って子供にコマンドを知らせようとしても、その子が見ている所が違えば、全く違う解釈をしてしまいます。そして解釈が違うまま、それを疑問に思いながらも言われた事を
やり続けると言う事も起きるのです。
だから、一生懸命教室で先生の話を聞いてマジメにやってても、
「はい!ココちゅうもくー」と突然言われると何がなんだか分からず
ドコ?ドコ?何の話?みんな何に頷いてるの?
焦れば焦る程、今何をやって何の話だったか、何に注目すればイイのか分からなくなって、
(この状態の時はパニクってるんでしょう)
結局、テストに出るであろう一番の押さえ所が一体何の話で、ナンの事だったのかサッパリ
分からないまま終わってしまうのです。
同じ様な事は日常茶飯事です。
遠足の工場見学で「はい。あそこを見て下さーい」と言われ、みんなそっちを向いて頷いてても、
広い工場、ドコの話なのかサッパリ分からないまま工場見学は終わります。
学校に帰ると工場見学の感想文が待っています。これから苦行が行われるのです。
こうして、「NOT自閉症の人」であれば、知能に係わらず、みんな意図するモノを共有しているのです。
ところが、自閉症児アスペルガー症候群は「NOT自閉症の人」と見ている所が違いますから、
瞬時に物事を共有出来ません。それを具体的に示すしているのがこの実験です。
自閉症児、自閉症者、アスペルガー症候群と生活を共にしていく上で、この意図の共有が最も重要で
最も難しい作業なのです。
自閉症児を子育てする上で「意図の共有」が上手く出来る親は、それだけで親として
満点なんです。今からでも遅くはありません。意図の共有に心がけ、何の事を言いたがっているのか、
何をどうして貰いたいのか。常に相手に分かりやすく具体的に語りあうことが、共に生活の質を
向上させる第一歩になるでしょう。
【自閉症テレビ24】社会性豊かなASD
見える事と みてる事 [見る]
ここでは、対人的な意味。コミュニケーションの仕方について着目し、論文構成が成されていますが、
自閉症児が、普段から「大多数」に反した所を見ている事を示準しています。
私の妻も、私も視力はあり、「見える」事に間違いありません。
しかし、日常生活で「見えてるつもり」でも「大多数」が見てる所と違うと言う実例は
いくらでも出て来ます。
この論文は主に「共同注視」に着目した論文ですが、私自身の体験、妻を見た様子から考えると、
自閉症児は「眼球の動き」にも問題があるのでは無いかと考えられます。
これは私の昔のエピソードです。「ヤマギシさん。モノ探してる方が忙しいんでねえべか」
これは、忙しく仕事をしている私を見て仲の良い工員さんが笑いながら言った事です。
実際、どんなに気を付けていても、モノが無くなるのはしょっちゅうで、この事を
「ウチは四次元空間に繋がってる」と表現します。それ位、どんな大きなモノでも
見つけられない時は見つけられないのです。
この時の眼球の動きを観察すれば、眼球は激しく動き回っている事が予想されます。
「左から順番に探せば絶対出てくる」そう言い聞かせながら順番に見ているつもりでも、
何故か、そのモノがある所を飛ばして探し続け、4度目にやっと見つけ出すと言う事があるからです。
眼球が、ある区間は円滑に動いていても、ある所に来ると何かの刺激で、飛び越えてしまう
のでは無いかと考えています。
これは、LD学習障害あるいはADHDの子供にも共通するのではないでしょうか。
彼らが、教科書を見ている時、黒板を見ている時、その眼球動作を観察すれば、
「なぜ理解できないのか。何に原因があるのか」すぐに分かると私の体験上考えられるのです。
今、眼球追跡装置の価格は驚く程安くなり、それをデータとして取り込むだけですから、
その実験応用の発展性は幾らでも考えつきます。
しかし、この論文が日本で発表されて20年。誰も注目せず、誰も使おうともしません。
日本の研究者のレベルの低さ、発想の無さにガッカリするだけです。
【自閉症テレビ17】アスペルガー薬と療育
何が欲しい? [見る]
これは、自閉症とマインドブラインドネスの中に出てくる物で、
人間が ID→EDD→SAM→TOMM と獲得する過程で
TOMMを獲得したと言う事を判別できる課題です。
自閉症を知る上で、これ程理論的で理解しやすい書籍は無いのですが、その内容はやや難解で、
残念ながら私はSAMまではすぐに理解出来ましたが、TOMMに至っては余りに難しく本を読み出して
20年。未だにTOMMの件を理解出来ていません。
さて、写真のこの課題。 本を買った当時、答えはすぐに分かり今でも同じ答えです。
その答えとは。
◎「こんなのキットカットに決まってるじゃん。見てるからそれを取るって決まってないし、
大体他のチョコなんかマズいから、キットカット以外欲しいと思う様なチョコ無いモン」
そりゃ、私◎だってバカじゃ無いから、この質問が目を向いている所を取る、と言うのが正解だろうと
察しが付くが、もし私が彼だったら絶対キットカット。
だから、私の回答は「チャーリーはキットカットを取る」です。
絶対間違い無い。
【自閉症テレビ12】見て分かるアスペルガー?1
見る日常 [見る]
この課題をもう一度解説すると。3才から4才児が対象の課題です。このカードを見せて、
「チャーリーはどのチョコレートを取るでしょうか?」と質問します。
答えは皆さんが当たり前の様に考える通りです。それも3才から4才児がやはり当たり前に答えます。
「正常な人」として完成しかかっていますから、答えを導き出すのには、ほとんどエネルギーを
消耗しません。このエネルギーを消耗せずに処理出来る
と言う所がミソです。
妻は検査当時IQ129、私は鬱ど真ん中でIQ115、ちょっと納得いきませんが、バカではありません。
それでも、この課題は私たちの日々の葛藤を示すのに格好の課題となります。
私◎の解釈としてはこうです。
1.これは、意図的に作られた課題で答えはポロだろう。
2.しかし、この目の位置は瞬間的な画像としての目の位置であり、本当は他をじっと見ていたが、
たまたま右下に目玉が行った時に切り取られたかもしれない。
3.本当は、一番嫌いなのでじっと見てしまったのかもしれない。
4.そう考えると、やはり誰もが好きで一番おいしいキットカットである事が正しい答えだ。
妻★の答えとしてはこうです。
1.チャーリーはポロを見ている。
2.本当は他のモノが欲しいのかも知れない。
3.欲しいものを見ていると、いじわるで欲しいものを貰えないに違いない。
4.だから、欲しくも無いモノを見ている。
5.しかし、これはこの様な心理トリックを試す課題であり、人を惑わすための課題だ。
6.だから、本当の答えは他にあるのだが、質問者の意図した答えを、答えられるかどうかが
問題の本質であるので、答えは「ポロ」だ。
この様に、アスペルガー症候群でマインドブラインドネスでTOMMを獲得できていない
私たち夫婦は、社会生活での心理ゲームで痛めつけられているので、
3才~4才児が簡単に答えられる課題を前にしても、不必要な、心理観察と無駄な考えの処理に
大量のエネルギーを消費、消耗してしまうのです。
もし、知能が低い自閉症のこども達に「療育」という心理的エネルギーの消耗を促す行為を
毎日仕込んだら壊れるのは当たり前の事である事が分かるでしょうか。
【自閉症テレビ28】ファンタジーと自閉症1
指さし [見る]
「正常な人」のこどもは、こんな小さなこどもでも指さしをして、何かを伝えようとします。
この事は「考える」という脳内のプロセス抜きで、無意識に「出来る」作業であることを証明しています。
つまり、「頭を使い考える」というエネルギーを使わずコストが掛からない楽な作業とも言えます。
一方、自閉症児が指さしをしない事も知られる様になりました。
指さしをしないと言う事は「指さしが出来ない」と言う事なのです。
しかし、私は指さしします。どう言う事でしょうか。
私が指差しを強烈に意識したのは、丁度この頃4才と5ヶ月の頃。
北海道の小樽から横浜に転居した頃、周りは珍しいモノばかり。二人の姉があちこち指差しながら、
あれナニ?あれ面白い!と指さしして話し合うのに反応したのだと思います。
◎「どこどこどこ」
「トールくんどうせ分からないから」
◎「でもどこどこ」
何度も何度も聞く相手を変えて、指差す方向を確かめました。
その時、その「指さしの仕方」を理論的にマスターしたのです。それは、両目の延長線上にモノがある。
両目だからモノと目と三角形で結ばれている。
さらに、指の向きとその三角形の交点にモノがある。
指差した時には、相手が見当を付けたモノより上にある時は、腕を少し上に修正する。
右にある時は腕を少し右に修正する。
あとは、相手とのやり取りで、腕と指先を微妙に動かせば相手の目線を、知らせたいモノに誘導できる。
こうやって、無意識に三角法の原理を会得して指差しを憶えました。
指さしを理解するに至った期間は、1ヶ月位だった様な気もしますし、1年だったのかもしれません。
それは分かりませんが、指さしは出来る様になっていました。
つづく
【自閉症テレビ11】ホントの診断法アスペルガー